西オーストラリア州のマードック大学で修士課程を取得後、現在国際的に活躍する和田翼さんにインタビューを行いました。立教大学で培った「他者と共に生きる力」を胸に、多様な文化や価値観を越えて挑戦を続ける和田さんの歩みに迫ります。
立教大学で育まれた宗教と多文化へのまなざし
筆者である私は、立教大学の派遣留学制度で、西オーストラリア州パースにあるマードック大学に留学している。今回は、同じく立教大学の卒業生であり、マードック大学の大学院に在籍していた和田翼さんにインタビューする機会を頂いた。和田さんは立教大学文学部キリスト教学科を平成31年(2019年)に卒業し、国際的な視点を持ち続けながら自身のキャリアを切り拓いてこられた方である。
和田さんは高校時代から歴史に関心を持ち、その中でも宗教が社会や戦争に与える影響に注目するようになった。その興味が宗教学への関心へとつながり、立教大学のキリスト教学科への進学を決めたとのことだ。キリスト教学科は1学年50人ほどの学科で、キリスト教に関わる多様な分野について広く学べることが強みだ。和田さんは在学中、西原廉太先生のゼミに所属し、アングリカニズムを中心に学んだ。死刑制度などの社会問題をキリスト教の視点から少人数でディベートし、様々な観点から考察することで学びを深めた。副専攻としてフランス語も学び、フランス語圏の文化にも触れるなど、幅広い視点を養った。
「文法だけではなく新聞を読んで意見を書いたり、プラクティカルな学びができたことはとても良い経験でした」と和田さん。フランス語の単語の中にキリスト教の概念が含まれていることもあり、言語学習を通してキリスト教やフランス語圏文化への理解も深まったという。
派遣留学で広がった世界と「他者を認める」意識
立教大学での学びの中で、和田さんは早い段階から長期留学への意欲を持っていた。1年生の2月に派遣留学に出願し、2年生の2月に留学が決定。3年生の2月から10ヶ月間、マードック大学に留学した。
マードック大学は学生の約半数が留学生という国際色豊かな環境で、多様な価値観に触れながら言語や文化を学ぶ日々は充実していた。フランス語圏の国からオーストラリアを訪れる留学生も多く、立教大学でのフランス語の学習が活きた。現地ではインドネシア語とアジア学を専攻し、オーストラリアという英語圏に位置しつつも地理的にはアジアに近い特殊な環境について学び、グローバルな視野をさらに広げた。
「外国人としてオーストラリアで生活する中で、自分の当たり前が他者にとっては当たり前ではないと気付いたことに喜びを覚えました」と和田さんは語る。無理に相手を理解しようとするのではなく、多様な文化があること自体を受け入れ、認め合うことの大切さに気づいたという。アフリカ系オーストラリア人、南アフリカ人、インド系シンガポール人、サウジアラビア人との共同生活では、衛生観念や食文化の違いに戸惑うこともあったが、お互いの国の手料理を交換して楽しむなど、文化交流を重ねた経験は人生を豊かにしたと振り返った。

国際物流企業での経験と宗教・文化理解の重要性
卒業後、和田さんは都内にある国際貿易関係の会社へ入社。専門商社とは異なり、さまざまな商材に関われる点に魅力を感じた。4年間にわたり、主に医薬品の輸入業務に従事。薬の原材料やワクチンなど、多岐にわたる分野の輸入に携わった。ヨーロッパや北米の取引先とのやりとりでは英語力が大いに活かされた。
輸入業務では各国の法令の確認が必須であり、それは単なる法律理解ではなく、その国の文化や宗教を理解することにも直結した。キリスト教文化に根差す社会背景を理解していたことが、国際取引の現場でも大いに役立ったと語る。

新たな挑戦へ――会計士を目指し再びマードック大学へ
都内で様々な経験をしたが「もう一度海外に身を置いてみたい」「ジェネラリストではなく、自分だけの専門性を身に着けたい」という思いから、4年間務めた会社を退職。再び学び直す決意をし、マードック大学の大学院へ進学した。世界中どこにいても必要とされ、グローバルに活躍できるフィールドを考え、専攻を会計学に決めた。
マードック大学を再び選んだ理由には、留学時代の楽しい思い出に加え、卒業生向けの授業料割引制度があったことも大きかった。大学院では実務直結型の会計学を学び、現地の会計事務所でアルバイトも経験。学んだ知識を現場で活かしながら、常に最新の情報をインプットし続ける環境を楽しんでいると語る。
「StudyPerth」アンバサダーとしての活動
さらに和田さんは、西オーストラリア州政府が運営する留学生支援団体「StudyPerth」のアンバサダーにも就任。世界各国からの留学生の中から選ばれる国際色豊かなチームと共に、日本代表として活動した。留学生向けのイベント運営や面談を担当し、パースに来た日本人留学生の支援、またパースから日本への留学希望者との橋渡し役を務めた。
また、国際教育関係者が集まるカンファレンスにStudyPerth代表として参加したり、オーストラリアの新聞社からインタビューを受けたりと、多忙な日々を送った。異なる文化や価値観を持つアンバサダー同士の意見調整役として、和田さんの「傾聴力」と「他者理解力」が存分に発揮された。

立教大学で育まれた「他者と共に生きる力」
「立教大学には多彩な学びの場があり、特にキリスト教学科では、少人数制の中で先生と密にコミュニケーションを取りながら学びを深めることができました」と和田さんは語る。質問すれば先生が答え、学びを深める文献を紹介してくれる環境があり、図書館も頻繁に利用して本や資料に親しんだという。留学で多文化に実際に触れた上で知識へとつなげていく――そんな学び方ができたのも、立教大学ならではだったと語る。知識をただ受け取るのではなく、興味を持ったら自ら調べ、教授に質問するなど、能動的に学びを広げる習慣も大学生活を通じて身に付いたという。「聴く力、そして自分から知ろうと行動する姿勢は、大学生になってから育まれたものだと思います。」
最後に、和田さんはこう言葉を結んだ。
「自分と違う国の人と共に生きるうえで大切なのは、周りへのリスペクトだと思います。どこにいても、『日本人の翼だからだよね』と言われるような存在でありたいです。」
今後は取材時パートタイムとして働いていた現地企業に正社員として入社し会計監査に従事する。今後はオーストラリアでの公認会計士の資格取得も目標にしている。
異なる文化や価値観の中で、相手に敬意を払い、耳を傾け、理解しようとする――。和田さんが培ってきたその姿勢は、まさに立教大学が大切にしてきた「他者と共に生きる力」を体現するものだ。大学時代、異なる宗教や文化を学び、実際に多様な人々と関わる中で、和田さんは自ら行動し、能動的に学ぶ力を身につけた。そして今、その力は国境を越えた環境でも、確かな強みとなっている。相手へのリスペクトを持ち、違いを受け入れながら共に生きる和田さんの姿は、立教大学が育んできた教育の成果そのものである。
(学生ライター 佐藤志保)
※掲載されている記事の内容はすべて取材当時のものです。