校友である俳優の大野拓朗さん(2012年卒、スポーツウエルネス学科)と南沢奈央さん(2013年卒、映像身体学科)が主演を務めた舞台『海と日傘』が、2025年7月9日から21日まで、すみだパークシアター倉で上演されました。本作は、劇作家・演出家である現代心理学部映像身体学科 松田正隆教授の代表作で、1996年に第40回岸田國士戯曲賞を受賞しています。演じたお二人に、立教に縁の深い舞台にかける思いを伺ったインタビュー(校友会報Vol.471掲載)のロング版をお届けします。
目次
新座キャンパス出身の二人が15年越しに夫婦役で初共演
お二人は今回が初共演だそうですが、ダブル主演が決まった時の心境を教えてください。
南沢:私は拓朗さんの1学年下ですが、これまでお会いする機会がなくて。同じ立教出身として以前から意識はしていたので、やっとご一緒できてうれしいです。しかも、偶然にも立教の松田先生の作品ということで、不思議なご縁だなと感じました。
大野:奈央さんは在学中からすでに活躍されていて、何度か学食でお見かけしたことはあります。「南沢奈央来てる!」と周りがざわざわしていたので(笑)。僕も大学2年の終わりにデビューし、いつか共演できたらと思っていたのですが、15年経ってようやく念願がかないました。松田先生を含めた全員が、新座キャンパスの学部なのも珍しいですよね。
南沢:そうそう、より親近感が湧きますよね。たまに卒業生に会っても、やっぱり池袋キャンパスに通っていた人の方が多いので。
大野:おしゃれなイメージの池袋に対し、新座は「地道に勉強しました!」みたいな仲間意識もあったり。
南沢:分かります(笑)。そんな共通点もあってか、初めて稽古場でお会いした瞬間に、「あ、ほっとできる人だ」と思って。夫婦役を演じる上で、とても心強かったです。
大野:光栄ですし、僕も全く同じ印象で、最初から安心できる存在でした。奈央さんに限らず、立教出身の方はどこか空気感が似ていて、通じ合うものがあるような気がします。

余白を読み解き、互いに役の解釈を深め合う
演じる立場から見た、松田正隆教授の作品の魅力とは?
南沢:松田先生は、日常のさりげない会話や時間の流れを描く、いわゆる「静かな演劇」を得意とされる方。描写やセリフの一つ一つに深みがあって、個人的にとても好きな雰囲気の作品ですね。前々から機会があればチャレンジしてみたいと思っていたので、今回お話をいただいてうれしかったです。ただ、劇作家としての松田先生は存じ上げていましたが、学生時代には接点がなくて。
大野:僕も同じで、作品を通してこんな素晴らしい先生がいるなんて「立教すごいな!」と改めて驚きました。この戯曲を30代前半で書かれたなんて、月並みな表現ですけど「天才なんだな」と思います。年齢も背景もばらばらな登場人物たちが話す言葉に、それぞれの人生がにじみ出ているんですよ。それでいて、「このセリフはどういう意味なんだろう?」と考えさせる余白もあるんです。
南沢:演者に委ねる感じがあって、読み解いていく作業も楽しいですよね。
大野:本当に。演じる人や解釈によって印象ががらりと変わる作品だからこそ、「自分たちの『海と日傘』をつくり上げたい」と思わされますね。
南沢:そういう意味で言うと、拓朗さんは戯曲の解釈にも性格の良さが表れているというか。変に斜に構えた捉え方をしないので、すてきだなと思いました。
大野:恐縮です(笑)。自分としては、もう少し違うアプローチも模索したいと思っているんですが。奈央さんの役づくりもさすがで、事前に想像していた人物像を超える、150点の直子を演じられていて感動しました。そもそもが、ほがらかで優しくて、直子にぴったりの方なんですけど。

映像表現とスポーツ心理学、それぞれの学びが生きる
学科での思い出や、学びが今に生きていることを教えてください。
南沢:私は現代心理学部映像身体学科の出身です。入学当時はまだ学科が開設されて間もない時期で、「どんな道に進む人が育っていくんだろう」とワクワクしていたのを覚えています。高校時代から演技の仕事はしていましたが、撮影や編集、脚本の執筆など多岐にわたる授業があって、「書く方も面白いな」と思ったり。自分の新たな一面に出会えた感覚がありましたし、可能性や選択肢をどんどん広げてくれる場所でしたね。卒業から何年も経った今、その素晴らしさを改めて実感しています。
大野:僕はコミュニティ福祉学部スポーツウエルネス学科(現スポーツウエルネス学部スポーツウエルネス学科)の一期生ですが、同じくスポーツに関わる幅広い領域を学べたのは有意義でした。体のメンテナンス方法からスポーツ栄養学、しょうがい者スポーツ、スポーツメディア論まで本当に多彩で、あまり興味がなかった分野も授業を受けてみると面白くて。プロスポーツの第一線で活躍されていた先生方が多く、現場のリアルな声を知ることができたのも勉強になりました。映像身体学科に関しては、日本の大学で映像や身体表現について専門的に学べる所は少ないと思うので、貴重な存在ですよね。

南沢:そうですね。実際に、演技をする上で直接生きていることもたくさんあります。特に、さまざまな角度から「表現」と人の「心理」の関係について学べたのは良かったですね。例えば映像作品の場合だと、「カメラワークや演出の仕方によって、受け手の心情がどう変わるのか」とか。
大野:いいなあ、そんな授業。受けてみたい!
南沢:楽しかったですよ。それまでは演じることに必死でしたが、「どう撮るか、どう演出するかも大事なんだ」と気づき、監督やカメラマン、スタッフの方々への感謝の気持ちも強くなりましたし。実は入学当初、お仕事を続けることに迷いがあったんですけど、「やっぱりお芝居がやりたい」と思えたのは、ひとえに立教での学びのおかげです。
大野:それは素晴らしいですね。僕が今の仕事で役立っていると思うのも似たような分野で、スポーツ心理学なんです。「本番で力を発揮するために、いかにメンタルをコントロールするか」が大事なのは、スポーツ選手も俳優も同じなので。僕らの仕事は、つまるところ人の「心理」に深く関わっているんだと思います。
南沢:ね! 本当にそう思います。
大野:「動揺している時に人はどこを見るのか」とか、目線一つとっても心理学の知見があれば演じやすくなりますしね。他にも、アクションや殺陣、役に向けた体づくりをする上では、体や栄養に関する知識にも助けられました。ここの腱(けん)がこうつながっていて、こう動くから……と、関節や筋肉の仕組みを踏まえて動きを研究することもありますし、これがまた楽しいんです(笑)。
南沢:私は立教大学で学んだことを本当に誇りに思っています。そして、同じキャンパスで過ごしていた校友の方々が社会のあちこちで活躍されていると思うと、自分も励まされる気がするんですよね。大好きな立教の名に恥じぬよう、皆さんに応援してもらえるように、これからも精一杯頑張ります!
大野:確かに立教の卒業生は、多岐にわたるフィールドで活躍されている印象があります。これまで多くの校友の方々にお会いしましたが、親身になって応援してくださる方ばかりで。そんな皆さんに「あの人も立教なんだよ」と誇りに思ってもらえるよう、今後も挑戦を続けていきたいです。
大野 拓朗(おおの たくろう)
コミュニティ福祉学部スポーツウエルネス学科(当時)2012年卒業。大学在学中の2010年に俳優デビュー。多数の映画・ドラマや舞台に出演し、2019年からは7カ月間のアメリカ留学を経験。2023~2024年には、ロンドンで全編英語のミュージカル『Pacific Overtures (太平洋序曲)』に参加。

南沢 奈央(みなみさわ なお)
現代心理学部映像身体学科2013年卒業。2006年、高校1年の時に連続ドラマでデビュー。テレビや舞台、ラジオなどで活躍する傍ら、読書・落語鑑賞・登山という趣味を生かし、書評・エッセーの連載や落語番組の司会、登山番組の出演、などでも活動。2023年には初のエッセー集『今日も寄席に行きたくなって』(新潮社)を出版。

舞台『海と日傘』
作:松田正隆 演出:桐山知也 プロデューサー:佐藤玲
長崎に住む一組の夫婦。
作家の夫・佐伯洋次(大野拓朗)と、余命3カ月を宣告された妻・直子(南沢奈央)。
二人の間に静かに流れる時間、暮らし。
身近な人々との他愛もない毎日の中で、夫婦は当たり前の日々を過ごしていく。

原作者のコメント
30年ほど前に書いた戯曲が、今回、新たな演出で上演されるのはとてもうれしいことでした。先日、私も観劇しましたが極めてシンプルな舞台で、俳優の方々の抑制された演技に息をのみました。とりわけ本学の卒業生である主演のお二人、大野拓朗さんと南沢奈央さんの存在が、この劇を静謐な会話劇にしていると感じました。

松田 正隆 教授
CHECK! 大野 拓朗さん、南沢 奈央さん最新情報

大野 拓朗さん出演作
『Love and Information』
イギリスを代表する劇作家キャリル・チャーチルが2012年に発表した戯曲『Love and Information』。 キャリル・チャーチルは、フェミニズムや政治、言語の実験性を通じて演劇界に革新をもたらしてきた作家であり、本作にもその挑戦的な視点が色濃く反映されています。
本作は、登場人物に固定された設定がないため無限の可能性を秘めており、科学・宗教・記憶・孤独・秘密・テクノロジーなどを扱った短いシーンの連なりによって構成され、それぞれのテーマが現代社会を象徴しています。
情報過多の時代における「生きることの断片」を、今回どのようにリーディング公演として立ち上げるのか。 演出・桐山知也ならではの視点、翻訳・髙田曜子による豊かな翻訳、そして2チームに分かれた華やかなキャスト陣による声の表現に、ぜひご期待ください。
2026年5月16日(土)~24日(日)
KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
2026年6月5日(金)~7日(日)
穂の国とよはし芸術劇場PLAT アートスペース
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大野 拓朗さん出演作
『The MELT -Cross of Roots-』
異なるルーツを持つ表現者たちの個性が出合い、交差し、身体が、歌声が、共鳴しながら一つの波動となって、新しい熱を生むアイスショー。 高橋大輔氏、荒川静香氏をはじめとする日本を代表するトップスケーターと、俳優や歌手など異なるルーツを持つ表現者たちの夢の共演です。
2026年5月2日(土)~5日(火)
KOSÉ新横浜スケートセンター
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大野 拓朗さん出演作
舞台『リア王』
シェイクスピア四大悲劇の中で最高峰と称される『リア王』。老いた王が娘たちの愛を言葉で量ろうとしたことから始まる、人間の根源に迫る作品です。
親と子、老いと孤独、愛と理解。その関係が崩れていく過程を通して、普遍的な問いを静かに、しかし厳しく観客に突きつけます。
開場101年目となる新橋演舞場のスケール感を生かしつつ、シェイクスピアが描く自然と対峙するリア王の姿を、巡る日本の四季の記憶と共に、「わたしたちの物語」としてお届けします。
2026年9月6日(日)~22日(火・祝)
新橋演舞場
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南沢 奈央さん出演作
こまつ座158回公演『花よりタンゴ』
井上ひさしの「昭和庶民伝三部作」の一作がこまつ座で22年ぶりに上演されます。戦後の銀座を舞台に、没落した元男爵家の四姉妹と、闇成金となった元使用人の人生をかけた勝負を描きます。
2026年5月12日(火)~31日(日)
紀伊國屋書店 紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
2026年6月26日(金)~28日(日)
新歌舞伎座
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南沢 奈央さん出演作
『月を抱く人魚』ー雨月物語よりー
上田秋成による怪奇文学『雨月物語』が、刊行から250年を経て舞台化。日本文化特有の幽玄な美しさと不気味さを基調に再構築された作品で、物語は南沢奈央さん演じる画家・宮木とモデル勝四郎の出会いを起点に展開します。忽然と姿を消した宮木の痕跡を追う中で、不可思議な出来事と人間の情念が浮かび上がっていきます。
2026年8月7日(金)~23日(日)
シアタートラム
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※掲載されている記事の内容は取材当時のものに加筆しています。